日本人の5人にひとりがスギ花粉症だと言われています。毎年2月になると、街中がマスクをした人であふれるほどです。ご承知の通り、スギ花粉症の方はくしゃみ、鼻みずなどの鼻炎の症状と、目がかゆいという結膜炎の症状で悩まされます。しかし、最近では、皮膚炎を起こす方があることも知られてきました。スギ花粉が飛ぶ時期になると、まぶた、特に上のまぶたが赤くなったり、かさかさしたりする方が多くなります。そのほか、花粉がつきやすい、ほほ骨のあたりや、あごからくびにかけてがかゆくなったり赤くなったりする方もあります。まぶたの皮膚炎で来院された患者さんの多くが、自覚的にもスギ花粉症を伴っていますが、鼻炎などの症状がない患者さんもいらっしゃいます。でも皮膚のアレルギーテストや血液検査を行ってみると、確かにスギ花粉に対する即時型のアレルギーが見つかることがあります。このようなスギ花粉皮膚炎は赤ちゃんを除いて、幼児から高齢者まで、様々な年齢の方におこりますが、20代から50代の方に多く、性別では圧倒的に女性の方に多くおこります。ちょうどスギ花粉が飛ぶ時期は、空気が乾燥していることと、女性の場合はめもとの化粧や化粧落としでまぶたの皮膚のバリアーがさらにこわれてしまっていることがきっかけになっているようです。一方、アトピー性皮膚炎の患者さんで、春先になると、顔やくびの湿疹が悪くなる方の一部にも、スギ花粉が皮膚にくっついて、それがかゆみをおこし、掻いてしまうことが原因となっている場合があるようです。
スギ花粉皮膚炎の症状は軽い場合がほとんどで、ジュクジュクするようなひどい湿疹になることは滅多にありません。治療もアトピー性皮膚炎用の塗り薬が有効で、比較的すみやかにひいてしまいます。ただし、症状が繰り返す患者さんもたくさんいらっしゃいます。スギ花粉症のある方、またアトピー性皮膚炎や乾燥はだがある方は、スギ花粉が飛んでいる時期には、帰宅したらすぐ洗顔をしたりシャワーを浴びたりして、皮膚についた花粉を落とすことが皮膚炎の発生や悪化の予防になるでしょう。また、花粉が入らないようなめがねをするのもよいでしょう。さらに大事なことは、目のまわりがかゆくても、決して激しくこすらないようにすることです。スギ花粉が飛んでいる時期に、まぶたがかゆくなったり赤くなったりしたら、近くの皮膚科を受診してください。
(横浜市保土ケ谷区:浅井皮膚科クリニック・浅井俊弥)