”知って欲しい”皮膚病の話

冬場のスキンケア

日本には四季があり、寒い冬にも良さがあり、風情が味わえます。防寒性のある衣類を着て、暖房が完備されていれば快適な生活がすごせます。でも乾燥肌になりやすい季節です、適切なスキンケアを理解して実践しないと、痒みに悩まされる季節になります。

冬場に肌が乾燥する要因として、高齢者やアトピー素因を持っている人は冬になると皮膚の潤い成分が少なくなってきます。さらに皮膚の乾燥は、気温と湿度に作用されます。暖房によって室内の湿度が低下したり、暖房器具が接触する部位は明らかに乾燥します。洗浄剤や器具による洗いすぎや擦り過ぎも考えられます。洗浄力のアップした合成洗剤、石鹸やシャンプーが普及しています。1分間の揉み洗いによって、水は25%ですが、石鹸は50%もの皮脂を取り除きます。皮膚の蛋白を変性する作用もあり、手荒れや肌荒れは増加しました。また、主婦湿疹の半数以上はアトピー素因のある人に出やすいといいます。また生え際の湿疹は、すすぎで残ったシャンプーの影響が強いようです。皮脂少ない所や衣類の摩擦により肌着の材質や裏地による刺激擦れる所にしばしば肌荒れができます。職業によっていろいろな化学物質を取り扱ったり、水仕事によって手荒れが生じます。冬の長風呂は皮膚の最外層にある角層細胞に含まれる天然保湿因子を失い乾燥させます。

皮膚が乾燥し、カサカサした状態を乾皮症と言います。高齢者に多く、腰の回りや上背部ないし下腿によく見られます。表皮の中まで神経線維は伸びるとともに、その数も増え敏感になります。だから、ちょっとした刺激で痒みを感じるのです。痒くなるので掻き壊し湿疹化したのが、皮脂減少性湿疹や貨幣状湿疹です。

治療法についてお話します。まず、保湿剤は刺激感がなく使用感の良い製品を選んでください。顔や昼間はべたつかないローションや乳液タイプのものを、夜や乾燥の強いところにはクリームタイプが良いと思います。マッサージする要領で、十分な量をカサつく所に、繰り返し塗ってください。とくに乾燥の強い所や外からの刺激を防ぐ意味で、綿手袋、靴下、包帯やガーゼ巻きを行うと効果的です。安全性にこだわり、湿疹になっている部位に保湿剤を単独使用しても効果は得られません、ステロイド剤との併用が必要になります。痒みが強い場合は、痒み止めを内服してください。

乾燥肌の生活指導ですが、入浴回数、石鹸、タオル類、風呂の温度などを考えてください。夏と同じようにしていませんか?低刺激性の石鹸だからといって、つっぱり感は大丈夫ですか?過度の暖房、低湿度になっていませんか?加湿器は置いてありますか?電気毛布や電気コタツを過度に使っていませんか?肌に触れて刺激になる起毛性、凹凸の織り地、化学繊維の衣類を着ていませんか?香辛料やアクの強いものを食べ過ぎていませんか? 肌荒れは、季節や年齢による生活習慣病です。季節に合わせた肌荒れ予防を考え、きちんとしたスキンケアを対処してください。常に疑問を持って肌荒れの原因を考え、潤いのある美しい肌を維持して若々しさを保って下さい!

(東邦大学大橋病院皮膚科・向井秀樹)