”知って欲しい”皮膚病の話

紫外線について

ひとむかし前までは、日に焼けた「小麦色の肌」は、健康の代名詞のように思われていました。テレビの化粧品のコマーシャルでも、日焼けを推奨するようなコピーが使われていました。それに対して、最近は美白一辺倒ですね。ファッションには流行がありますが、再び小麦色の肌がもてはやされることはないと思います。なぜならば、紫外線が人体に与える悪影響がはっきりと認識されるようになったからです。

太陽の光には、眼に見える光(可視光線)のほかに、赤外線や紫外線が含まれています。紫外線は、地表に届く光の中で、最も波長の短いものです。紫外線は、波長の長いほうから、A波、B波、C波に分類されますが、皮膚に対する影響の強いC波は、オゾン層などにさえぎられて、地表までは届きません。オーストラリアなどでは、フロンガスによるオゾン層の破壊のため、地上に到達する紫外線のB波が増加しており、それに伴い皮膚がんの発生率が上昇しています。日本での紫外線観測は、まだ歴史が浅く、はっきりと紫外線量が増加しているという証明はされていないようです。しかし北半球での紫外線量の増加を指摘するデータもあり、今後はますます注意が必要です。

紫外線を浴びることによる皮膚の障害には、「日焼け」と呼ばれる急性の障害と、慢性障害(しみ、しわ、皮膚がん)に分けられます。ここでは詳細は省きますが、特に慢性の障害については、一度起きてしまうと、もとどおりに治すのはなかなか困難です。また、紫外線は眼や、人体の免疫機能に対しても悪い影響を与えます。

紫外線の皮膚障害に対しては、治療よりも予防が第一です。最近は、塗り心地もよく、効果も高いひやけどめ(サンスクリーン剤)が販売されています。紫外線B波を防ぐ効果を示すSPF、A波を防ぐ目安のPAの値が表示されていますので、使用する目的(日常生活であるのか、少し長いあいだ屋外にいるのか、海・山など紫外線の強いところで使うのか、など)に合わせて選ぶ必要があります。また、SPFやPAの値の高いものさえ塗っていればよいのではなく、汗や水などで流れてしまっては意味がありませんので、状況に応じて塗りなおすことが必要です。しかし、サンスクリーン剤は、サッカーにたとえればゴールキーパーの役目、つまり「最後の砦」だと思ってください。サンスクリーン剤を塗っていればいくら日光に当たってもよいというわけではありません。日差しの強い時間帯の外出を控える、肌の露出を避ける、帽子や日傘を使う、あるいはサングラスをかける、などの対策を心がけましょう。

(横浜市港南区:ふくろ皮膚科・袋 秀平)